広告運用の定例会を「報告会」にしない。AIに取られないためのアジェンダとは
BIツールやAIの進化により、定例会で「過去の数字」を報告するだけの時間は形骸化しています。
これからの時代、代理店やマーケターが定例会で示すべき「コンテキスト」「仮説検証」「事業貢献」という3つの価値と、生産性を高める会議設計について解説します。
はじめに
「先月のCPCは前月比105%で、CV数は微減しました。要因は競合の入札強化と考えられ…」 毎月の定例会が、資料に書いてある数字を順になぞるだけの時間になっていないでしょうか。
かつて、散在するデータを集計し、Excelで可視化することには大きな価値がありました。しかし現在は、Looker StudioなどのBIツールがリアルタイムで数値を可視化し、AIが一次的な要因分析まで行える時代です。 単なる「集計」や「報告」の価値は、相対的に低下しています。
ツールで代替可能な業務に時間を割くのではなく、人間が膝を突き合わせて議論すべきことは何なのか。今回は、これからの広告運用定例会があるべき姿について考えます。

「報告」ではなく「文脈(コンテキスト)の解釈」を行う
AIは数字の処理には長けていますが、その背景にある複雑な文脈を読み解くことはまだ苦手です。
管理画面上の数字を見て「CPAが上がったので入札を抑制します」というのは、誰にでもできる単純な判断です。
現場で求められているのは、数字の裏側にある「定性的な情報」や「外部要因」を掛け合わせた解釈です。
ポイント
- 数字が悪化した要因は、競合他社がテレビCMを投下して市場の関心シェアが変わったからではないか?
- CV率の低下は、現場の営業担当から上がってきている「リードの質の変化」と相関しているのではないか?
- 決算期前の予算消化を優先すべきフェーズなのか、利益率を重視すべきフェーズなのか?
こうした「管理画面の外側にある情報」を数字と結びつけ、「なぜそうなったのか」という納得感のあるロジックを提示すること。これが人間に求められる分析業務です。
「過去の確認」ではなく「未来の仮説検証」に時間を使う
レポートはあくまで過去の結果です。定例会の時間を過去の確認だけに費やしてしまうと、肝心の「これからどうするか」という議論が疎かになります。
価値のある定例会とは、「仮説検証のサイクルを回す場」であるべきです。
ポイント
- 仮説立案:
「このターゲット層には、機能訴求よりも課題解決型の訴求が有効ではないか」- 実行結果:
実際に配信した結果どうだったか。- 次回の議論:
「仮説は正しかったのか。それを踏まえて次はどの施策を展開するか」
過去の報告は、この「次のアクション」を決めるための判断材料に過ぎません。
事実確認は手短に済ませ、残りの時間を具体的な施策の決定や中長期的な戦略のすり合わせに充てるべきです。
「運用代行」ではなく「事業課題の解決」へ視座を上げる
定例会は広告運用の枠を超えてクライアントと議論できる貴重な機会です。
チャットツールやメールでは伝わりにくいニュアンスも、対話形式であれば深く掘り下げることができます。
例えば、
「広告のCPAは目標内だが、採用が計画通りに進んでいない」
「新商品のターゲット選定に迷っている」といった、広告管理画面には表れない事業課題が出てくることがあります。
これに対して、「広告運用とは関係ない」と線を引くのではなく
「広告データを活用して採用ターゲットのインサイトを探りませんか?」
「テストマーケティングとして広告を使ってみませんか?」と提案できるかどうか。
単なる「運用代行」の枠を超え、事業成長に貢献するパートナーとしての視座を持つことが重要です。
具体的な改善アクション:アジェンダの時間配分を見直す
定例会の質を変えるために有効なのが、アジェンダ(進行表)の時間配分を見直すことです。 報告中心の構成から、議論中心の構成へとシフトします。
改善前:報告中心の構成
- 00-45分:月次レポートの報告(数値の読み上げ)
- 45-55分:来月の施策提案(時間不足で駆け足になりがち)
- 55-60分:事務連絡
改善後:議論中心の構成
- 00-05分:全体サマリーの共有
細かい数字は事前送付した資料での確認を前提とし、全体の良し悪しとトピックのみを伝えます。- 05-20分:考察と要因分析
「なぜこの結果になったのか」について、競合動向や市場の変化を交えて解説します。- 20-50分:今後の戦略議論
メインパートです。「次に行う施策」「検証すべき仮説」「中長期的な方針」について時間をかけて議論し、意思決定を行います。- 50-60分:決定事項の確認
「誰が」「いつまでに」「何をするか」のアクションプランを明確にします。
まとめ
定例会の目的は、運用者が業務の進捗をアピールすることではありません。クライアントと運用者が現状認識を合わせ、次の打ち手を決めるための「意思決定の場」です。
もし現在の定例会が「報告」だけで終わっていると感じるなら、次回からアジェンダを変更し、「過去の数字」よりも「これからの戦略」について議論する時間を増やしてみてはいかがでしょうか。その積み重ねが、広告成果の最大化につながるはずです。
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プロジェクトマネージメント課に所属している。
日々の実務で得た知見を整理し、読者にわかりやすく届けることを心がけています。